詠み人知らず - つつめども かくれぬものは なつむしの みよりあまれる おもひなりけり
(詠人不知/大和物語 第40段より 後撰集 夏209)
桂のみこに式部卿宮すみ給ひける時、その宮にさぶらひけるうなゐなん、このおとこみやを「いとめでたし」と思ひかけたてまつりたりけるをも、えしりたまはざりけり。
蛍のとびありきけるを、「かれとらへて」とこのわらはにのたまはせければ、汗袗(かざみ)の袖に蛍をとらへて、つつみて御覧ぜさすとてきこえさせける、
つつめども 隠れぬものは 夏虫の 身よりあまれる 思ひなりけり
包んでも隠し切れないものは、夏虫(蛍)の身から溢れ出る光のような、私の想いなのです。